「ソフト・クラビング」が世界で流行のムーブメント!? “日中に遊んで夜9時には帰宅”
2025.10.09

オーストラリアで、従来のクラブカルチャーとは異なる新しいスタイル「ソフト・クラビング(Soft-clubbing)」が急速に広まっている。
昼間にクラブで踊り、夜9時には帰宅してぐっすり眠る——そんな健康的なクラブカルチャーが、30歳以上の大人層を中心にブームに。オーストラリアでは週末の昼に行列ができるほど人気を集め、RUSSH誌やSydney Morning Herald(SMH)でも特集が組まれるなど、全国的なムーブメントに発展している。
ソフト・クラビングとは?
ソフト・クラビングは、午前から夕方にかけて開催されるのが特徴で、夜9時頃にはイベントが終了する。翌日の仕事やプライベートへの影響が少なく、睡眠リズムを崩さずに音楽を楽しめる点が支持を集めている。主な対象は30歳以上のミレニアル世代後半からGen Xまで。子育てやキャリアに忙しい大人層にとって、深夜ではなく昼間に楽しめるクラブは理想的な選択肢となっている。
会場は、カフェやベーカリー、ジム、ヘアサロンなど“非伝統的”な空間が多く、アルコールは控えめ。代わりにコーヒーやマッチャラテなどが提供され、「カフェ×クラブ」のような雰囲気を演出する。目的は単なるパーティーではなく、音楽とコミュニティを通じて心身のウェルビーイングを高めること。従来のナイトクラブにありがちな“疲労感・高コスト・孤立感”を取り除き、より健全でポジティブな体験を目指している。
このトレンドを最初に提唱したのは、英国のライター Yusuf Ntahilaja氏。彼がSubstackで「Soft-clubbing」という概念を紹介したことがきっかけで、世界的な注目を集め、2025年のEventbriteのデータでは、「コーヒークラビング」イベントが前年比478%増、「モーニングダンスパーティー」が20%増と、急速な成長を遂げている。
なぜ今、30歳以上がハマるのか?
パンデミックを経て“早寝早起き”の文化が広がった今、深夜のクラビングに魅力を感じにくい層が増えている。ソフト・クラビングは、健康的でありながらも“自分らしい楽しみ方”を求める人々にぴったりだ。
経済的にも、入場料は10〜20ドル程度と手頃で、アルコール代がかからないため支出も控えめ。ドレスコードも緩く、音量も控えめなため、会話がしやすく孤立感がない。ABC Newsによれば、地方都市では30代以上が「日中のダンス」でメンタルヘルスを改善する例も増えているという。
また、Vibelabのジェーン・スリンゴ氏は「午後6時〜翌朝6時という時間帯に縛られず、もっと自由に楽しめるようになっている」と指摘。2014〜2019年に施行されたロックアウト法(深夜の入場や飲酒を制限する法律)が、早い時間帯のナイトライフを定着させた背景もあり、ソフト・クラビングは時代の流れに自然と合致した形といえる。
“夜遊び”から“昼遊び”へ、ライフスタイルの転換
オーストラリアでは、アルコール消費の減少とウェルネスブームがこのムーブメントを後押ししている。特にGen Z世代の約34%が過去3ヶ月間アルコールを摂取していないと回答しており、健康意識の高まりが文化的変化を促進している。
地方都市アルベリーでは、土曜日の日中からクラブ前に行列ができるほどの人気ぶり。参加者のJoanna van Deventer氏は「私たちは18歳じゃなくても楽しんでいい。早い時間に踊れるのは素晴らしいし、ちゃんと睡眠も取れる」と語る。シドニーでは「Coffee + DJs(Maple Social Club)」が人気で、初回50人から現在は400人以上が参加するイベントに成長。ノンアルコール中心の構成ながら若者から大人まで幅広く支持を集めている。
メルボルンでは「Mix&Matcha:AM」という朝のクラブイベントが誕生し、マッチャラテを片手に踊るという新感覚のスタイルが話題に。地方のアルベリーでは、午後から始まる「Daytime Clubbing at Pub」が地元住民のストレス発散の場として人気だ。さらに全国各地では、ジムやサウナを活用した「サーマル・ギャザリング」など、独自の形でソフトクラブ文化が展開している。
SNSでの反応と議論
X(旧Twitter)では「#SoftClubbing」関連の投稿が急増し、賛否両論の声が飛び交っている。
ポジティブ派は「翌日元気で最高!」(DJ Sway)、「東京のデイイベントに似ていて新鮮」(URBAN SOUL RELAX)など肯定的な意見が多い一方で、「クラブの本質を薄めている」(Avitas)、「地下文化の商業化」(Mueni)といった批判も少なくない。
日本のユーザーからは「早起きしてアフター!?」といったユーモラスなコメントも見られ、世界的な注目を物語っている。
新しいナイトライフのスタンダードへ
ソフト・クラビングは、単なる“昼のクラブ”ではなく、社会の価値観の変化——健康志向・節約・ウェルビーイング——を反映した新しいカルチャームーブメントである。
オーストラリアではすでに30歳以上の“大人の遊び場”として定着しつつあり、日本でも渋谷や代官山のカフェイベントを中心に、同様のスタイルが生まれ始めている。
“夜遊び”から“昼遊び”へ——あなたも、太陽の下で踊る新しいクラブカルチャーを体験してみては?
